よい子のやめ方〜高校教員をやめるまでの道のり〜

よい子の人生を送ってきたけれど、ふとこのままでいいのか悩んだあなたへ。一緒によい子をやめる練習しませんか?

人から奪われるタイプの弱くて優しい生徒

私の授業のなかで

 

まったく私と話をしたことのない

 

男子がいる。

 

 

彼はとても物静かで、

 

見かけもとてもかわいい顔をしていて、

 

授業もまじめにうける。

 

てきぱきするタイプではないけど、

 

叱るのもかわいそうになるくらい

 

優しくて物静かな生徒だ。

 

 

私の授業の中で、

 

ハロウィーンの時かなにかに

 

教材で使った飴のあまりを

 

「ほしい人は持ち帰っていいよ」

 

と生徒に伝えたところ、

 

何人かが取りに来た。

 

 

前の席に座っている彼も手を伸ばしたけど、  

 

声のでかくて配慮の少ない天然ボケの

 

男子がほとんど飴をとってしまったので、

 

彼の分は1つしかなかった。

 

 

大人しい彼が

 

飴をとりにきたことが意外で、  

 

これは彼が初めて見せる自己主張だった。

 

これは、何とかしてあげたい。

 

だから、天然ボケの男子に伝えた。

 

「あなたまわりを見てごらん。

 

飴が好きなのはわかったから、

 

みんなで平等にわけなさい。」

 

大人しい彼が萎縮しないように、

 

あえておおげさに

 

天然ボケの男子をからかうような

 

言い方をした。

 

 

そういうと、天然ボケの男子は

 

「そうだなー、ちゃんとわけよう!」と、 

 

おとなしい男子と他の生徒と

 

飴を同じ数だけわけていた。

 

 

 

授業のあと、

 

大人しい男子生徒が教室移動するときに

 

ちょっと話しかけてみた。

 

「飴もって帰ってたけど

 

甘いもの好きなの?」

 

「うん、ぼく甘いもの好きなんです。」

 

「私も好き。甘いものだったら、 

 

何が一番好きなの?」

 

「ぼくチーズケーキが好きです。」

 

「いいねえ。私はタルトが好きだなあ。」

 

「タルト、いいですね~。」

 

 

何にも特別じゃない、

 

世間話レベルの内容だったけど、

 

初めて彼が発信した感情を

 

受け止められた気がして、

 

私はとても嬉しかった。

 

 

 

気弱で飴がとれなくて

 

困っている彼を守ることができてよかった。

 

 

 

大人しい彼は、

 

知的障害がある、要配慮の生徒だ。

 

  

 

パッと見はまったく普通の高校生なので

 

大人しい、手のかからない生徒、

 

という見方をしてしまいがちだ。

 

 

 

障害の有無は別にして、

 

こういうタイプの生徒は

 

天然で、声かでかくて自己主張が強い生徒に

 

いつも何かを取られてしまう。

 

 

飴だったり、座りたい座席だったり、

 

教員からの注目だったり、いろいろ。

 

 

自己主張の強い生徒は、

 

知らず知らずのうちに

 

まわりの大人しい人たちから

 

何かを奪って生きている。

 

でも、気づくことはない。

 

たぶん一生。

 

 

悪意がないからこそ、

 

周囲もスルーしてしまう。

 

 

私は、どちらかというと

 

奪われる側の人間だったから、

 

生徒でそういう子達を見ると

 

胸がいたくなる。

 

自分が彼らのために、  

 

何かしてあげたいと思う。

 

 

私は奪わないよ。と伝えたいと思う。 

 

 

でも、私も気が弱いし 

 

授業でいっぱいいっぱいのときは

 

自己主張の強い人間たちを叱れず、

 

彼らの論理にしたがって

 

ことをすすめてしまうときもある。

 

 

そういう自分がいちばん嫌いだ。

 

 

過去の自分と同じような生徒を

 

守っていくんだ、という

 

矜持がもてない自分が情けない。

 

 

 

今日は、

 

優しい男子を一人守ることができて

 

とても嬉しかった。

 

 

 

その男の子が、

 

そっとはにかんで笑うのを見ると、

 

自分も何かに許された気がしてほっとする。

 

 

大人しい子っていいなあ。

 

やっぱり、

 

私にはやんちゃでおもしろいタイプより  

 

言いたいこと言えなくて、

 

ちょっと悩んでる優しい子の方が

 

話していて落ち着くなあ。  

 

言葉が通じるという、安心感があるなあ。